Saucy Dog

LINER NOTES

Saucy Dogの進化が止まらない。通算5枚目となるミニアルバム『レイジーサンデー』は、バンドが結成当初から追求し続けてきた「歌」の可能性をさらに押し広げるものになった。「レイジーサンデー」とは、直訳すると、“くつろいだ日曜日”の意味だ。そのタイトルが表すとおり、全体的にテンポを落とした穏やかなムードが漂う今作は、バンドアンサンブルの精度がさらに研ぎ澄まされ、ゆえに石原慎也(Vo/Gt)の歌の魅力がより自然なかたちで際立っている。
ロックバンドの「いい歌」とは、抜群にきれいなメロディだけで成立するものではない。そこに寄り添う各プレイヤーの理解と経験値があってこそ最大限に生きるものだと思う。今作『レイジーサンデー』は、そんなバンドの幸福な相乗効果によって大きく進化と深化を遂げた1枚だ。
それは、日本武道館を経た今のSaucy Dogがとても充実した季節を迎えていることを意味する。
Text by 秦理絵(はだりえ)

「レイジーサンデー」5th Mini Album
  • 1.なつやすみ

    扇風機のまわる音。蚊取り線香、蝉の大合唱、スイカの種――。歌に散りばめられたいくつものワードがのどかな夏休みの風景をありありと描くオープニングナンバー。Saucy Dogのサマーソングと言えば、「シーグラス」もあるが、あの曲の爽やかな渚の疾走感と比べると、今作「なつやすみ」は少し気だるい。あの頃の夏の記憶をぼんやりと辿り、〈どうやって生きて行くのか〉をぐるぐると思い悩む内省的な1曲だ。〈シナリオなんてひとつもなくていい〉。そう締めくくるこの曲を1曲目に置き、ここから幕を開けてゆく“シナリオのない7曲の物語”に導いていく流れはとても鮮やか。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    題名と曲の雰囲気が凄くマッチする曲だと思います。
    アコギのザクザク感、サウンドの清涼感も
    今までのサウシーでは無かったので聴くたび新鮮に感じます。
    題名の「なつやすみ」から歌詞はほんかわしてるかと思いきや、後半の「死に方は選べ少年」など、人生について考える部分もあるので聴く度に印象が変わると思います。

  • 2. シンデレラボーイ

    初めて全編を女性目線で描いたナンバー。これまで数多くの失恋ソングでオトコの女々しさと未練を歌ってきた石原が、今作で表現したのはオンナの独占欲と執着、とでも言おうか。「シンデレラボーイ」というファンタジックなタイトルだが、これを〈死んで〉とかけているあたりは少し怖い。石原の歌詞には珍しく、〈カラダは単純なのね〉と、濡れた生々しさが表現しているのも女性目線だからだろうか。決してテンポが速い曲ではないが、ラストのサビから後半にかけて切なさをピークに持っていくアレンジ、歌うようなギターと秋澤和貴(Ba)の跳ねるベースが絡み合う間奏は聴きどころ。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    サウシーらしさ全開の曲。でも、新しさも入ってて斬新さも兼ね備えていると思います。
    特に曲の構成の部分。
    Dメロのちょっと間抜けな感じとインターのブルージーな雰囲気。
    サウンド面は結構シンプルで、メロと歌詞をグッと押し出す感じ。
    実はラジオボイスの部分は最初反対でした!!でも、出来上がって聴いてみると「お、いい感じゃん!」と思いました。
    ここでキャッチーさがより出たのかなと。

  • 3. リスポーン

    タイトルの「リスポーン」とは、ゲーム用語で、プレイヤーが死んでしまった場所から再スタートすることを意味する。〈もしあの頃に戻れるなら〉と、ふたりの関係が終焉を迎えたあとで抱いてしまう、行き場のない後悔を描いたSaucy Dogの真骨頂とも言える失恋のバラード。ボーナストラックを除いて、初めてせとゆいか(Dr)が一部メインボーカルを務めたことで、“終われない男”と“終わらせた女”のドラマがリアルに浮かび上がった。うねるような大きなグルーヴにのせて、押し付けるのではなく、引き寄せあえていたらと、そんなふうに愛の真実を歌えるのも今のSaucy Dogならではだろう。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    サウシーでは「film」以来の変拍子の曲です。
    イントロあって慎也の歌入りからの、まさかのせとさんのソロパート。ここだけを聴く為に最初から再生をする人いると思います。
    実はここのパートが個人的に結構好きで、今も聴きながら3回くらいリピートしました。
    個人的に恋愛の曲というより"曲"としてのイメージが強くて、歌に寄り添うというより、わりかしバンドサウンドライクだと思っています。
    今回のアルバムではかなりロックよりだと思います!
    余談ですが、個人的にベースラインがアルバムの中でも1、2を争うくらい好きです。

  • 4. わけあって

    シンガーソングライターの當山みれいに提供した楽曲のセルフカバー。全体に音数が少ない、シンプルなアレンジで仕上げた。曖昧なまま、はっきりとしない関係性がゆえの悲しい結末。それを後悔し、〈無かったみたいに/すればいい〉と吐露する歌詞の切なさは、マイナー調のフォーキーなメロディによっていっそう強く胸に突き刺さる。自分ではない誰かを歌い手に想定したからこそ、石原のソングライターとしての新領域が開拓された1曲。〈訳あって〉と〈分け合って〉のダブルミーニングのタイトル、流れるようにメロディを転がるリズム感のいい歌詞の言葉選びもハイセンスだ。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    慎也が當山みれいさんに書き下ろした曲を、今回Saucy Dogとしてセルフカバーいたしました。
    アルバムの中で1番シンプルかなと思っています。
    90年代の洋楽ロックサウンドでコードも実はそうなっています。慎也は意図してつくったのかな??
    サウシーっぽいようでぽくないなんとも珍しい一曲になった思います。
    個人的にアウトロのベースとギターのフレーズが少しRadioheadっぽくて好きです。

  • 5.君がいない

    ふたりの関係性に不協和音が鳴る「シンデレラボーイ」から、後悔の「リスポーン」「わけあって」へと、その曲順が、ひとつの恋愛が終わりに向かうストーリーにも感じられる今作。そういう意味で、「君がいない」は、決別を吹っ切る位置づけの曲、と言えるかもしれない。バンド初期を彷彿とさせる疾走感溢れるロックサウンドに、せとが叩き出すスネアが軽快に駆け抜ける。本気の告白を軽くあしらわれる〈僕〉の情けない心境が遊び心たっぷりに綴られるこの歌には、ラブソングを封印した時期もあった石原が、再び自然体でラブソングを生み出すようになった今のモードが強く表れている。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    このアルバムで唯一のアップテンポ曲。
    ドロドロしているのか、爽やかなのか、
    どっちつかずな雰囲気がこの曲を体現していると思います。
    サウンド面と構成も今回のアルバムではかなりシンプルな部類に入ると思います。
    自然なのか意図的なのかMVもメンバーのみなので、この文章を読んだ後に是非MVもチェックしてみてください。
    個人的にこの曲の歌詞が結構石原慎也っていう人間を表している気がするので、そこら辺を皆さん耳を凝らして聴いてみてくださいね。

  • 6. 週末グルーミー

    ギター、ベース、ドラムという3つの楽器のアンサンブルでいかにふくよかに心象風景を映し出すかを追求し続けてきたSaucy Dogの最高到達点とも言える1曲。無慈悲なほど平等に訪れる眩しい朝の気配を繊細なギターで捉えたイントロにはじまり、淡々と流れる日常の足音を秋澤のベースが大胆な起伏で奏でる。歌の機微をよく理解して展開するせとのドラムには一貫して力強い包容力があった。理想と現実のギャップに悩む“週末の憂うつ”に小さな希望を残した石原らしい歌詞には、カゴメ「野菜生活100」とのコラボによるテーマも絶妙にハマっている。もう、すべてが完璧だ。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    「おはよう。いってきます!」
    「ただいま。今日も疲れた〜。」が自然に頭に思い浮かぶと言うか。誰もが共感するんじゃないかなぁと思います。
    「悩んでもいいんだよ、ほら!でも、ちゃんと頑張りなよ!」って背中を叩かれてるような気持ちになります。
    今聴きながら書いているのですが、改めていい曲だなぁ、改めて俺も頑張ろう!って思いました。

  • 7. 東京

    かっこいいロックバンドには、かっこいい「東京」の名曲がある。島根、高知、奈良と、それぞれの街を出て大阪で結成した3人が、上京し、3年間の東京生活を経て作り上げたこの曲「東京」は、〈大丈夫僕は。上手くやれているよ〉と、故郷の大切な人に宛てた温かな言葉が印象的だ。ブルージーなギターが哀愁を掻き立てながら、大都会に生きる命の鼓動を力強く刻んだバンドサウンド。この街では諦めたこともあった。だが、〈繋がってたんだ ずっと〉と、過去の道のりを静かに肯定する歌詞は、バンドの節目として日本武道館まで辿り着いた今だからこそ歌うのに相応しい1曲だろう。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    はっきりいって名前負けしてません。
    全パートしっかりしていて、歌、ギター、ドラム、ベース最高かっけえ!

    ……すみません、この曲の説明だけ語彙力が無くなります。本当にそれくらい良いんです。
    メンバー全員が大事にしているものが全部入ってるような気がします。「東京」に住んでいない貴方も必ず共感できると思います。僕達がそうだったように。

  • 8. sugar

    ほがらかで清涼感のあるコーラスワークから幕を開ける真骨頂のバラード。石原が描くラブソングは、押し付けすぎたり、言わなすぎたり、相手との距離感を間違えては後悔する曲が多いなと思う。この曲「sugar」もそのタイプ。だが、そうやって失敗を積み重ねながら、〈答え合わせが何年後になったって/ふたりでいよう〉と決意を込めて締めくくるところが、この曲の、ひいてはこのミニアルバム全体に託した大切なメッセージだと思う。恋愛に限らず、今の自分の選択が正しいかどうかは死ぬまでわからない。1曲目に、〈死に方へ選べ〉と歌った「なつやすみ」から幕を開ける今作『レイジーサンデー』は、とても広い時間軸で人生を俯瞰するような作品になっている。過去を背負い、やがて訪れる死を意識しながら、今を懸命に生きる曲たちが収められている。きっとその〈答え合わせ〉は何年後になっても構わないのだ。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    Oasisの「Don't look back in anger」を彷彿とさせるイントロ。あ、きた、あの曲だ!となる感じ。
    バンドサウンドは全体的に暖かくて、優しい感じです。
    構成面で注目の部分が気持ちの起伏をベース&ギターソロからのDメロで表現しています。
    そこも注目して聴いてみたら、また曲の印象も変わって聴く事が出来ると思います。

    余談ですが、日本武道館でのライブでこの曲を演奏した時は本当に大事な曲が出来てよかったなぁと思いました。

  • 9. いつもの帰り道(Bonus Track)

    せとが作詞作曲とボーカルを担当する恒例のアコースティックナンバー。生まれ故郷を思い、そこで待つ両親への想いを綴ったテーマは、どこか本編の「東京」にも通じる。〈あなたの顔が浮かんで/まだ死ねない〉。これまでのせと楽曲のなかでも、とりわけストレートに自身の想いを曝け出したその歌は、帰る場所があることがこんなにも人を強くすることを気づかせてくれる。

  • Ba.秋澤のセルフライナーノーツ

    今までのボーナストラックで1番好きです。
    なんだろ、単純に歌詞いいし、曲としてもいいし、ボーナストラックなのが勿体なくね?!って素直に思っています。
    実はレコーディング前日までバッキングのギターとメインのギターを考えれてなかったのですが、まさかのマジックでめちゃめちゃ良くなりました。
    今のご時世にまさにピッタリな曲で、お酒でも呑みながら聴いたら尚の事グッと来ます。

  • せとさん_mini_0810012853.png Dr.せとからBa.秋澤へ

    秋澤やるじゃん
    読んでて楽しかったし、文章力高ー!!って思いました。どの曲もとっても気になるね。
    みんなぜひCDゲットして聴いてみてください!!